研がれる私/長編エロティックミステリー
異変の始まり③



翌朝早く…

私は自宅から車で約1時間半の行程となる、石橋の自宅へと向かった

私の表向きの”正職”は今週いっぱい休みにしてあるので、それまでの間に、”すきま女優”宮本ルイの”今回の決着”は済ませてやる…

私は、そう決意を固めていたわ


***


そして午前8時50分…

東京郊外の、割かしごみごみした一角に建つカレのアパートはすぐに見つかった

それは概ね築30年程度は軽く超えると思われる、見るからに疲れた古い2階建ての木造建物だった

彼の部屋は2階の端から2番目の一室で、表札も”石橋”でちゃんとつけてあった

では、突入となる…


***


ピンポンを鳴らすと、石橋ミッチーはおっとり刀で玄関を開け、出てきた

いかにも寝起きというその顔は、突然の朝の訪問者が、”他ならぬ”私だと知って、思わずシャキッとしたわ

「あんた…!なんなんだよ、朝っぱらからいきなり…。昨日、これっきりだって言ったはずだぞ!」

”当初”の本命くん、かなり焦ってた

一方の私は、落ち着いたもんだった

カレが半身を玄関戸から外に晒してるのをすかさず注視…

私はさりげなく、ケガの箇所を探り当てていた

あれだ!

”その箇所”は…、右手だった


***


石橋ミッチーは右手の薬指に包帯を巻いていたのだ…

「指なのね、ケガを”負わされ”たのは…」

「そういうことで解釈してればいいさ。だけど、余分なことは言わないぜ。もう終わりにしたいんだ」

「わかったわ。でも…、ホントに大事はないのね?」

「ああ。全治すれば通常の生活には影響ないと医者から言われてるしな。…ああ、もう帰ってくれ。今回の件はすべて忘れたいんで…」

そう言うが早いか、カレは力任せに玄関ドアを閉めた


***


カレのヒステリック気味な拒絶の姿勢…

それは何を意味するのか

それとも、特段何もないのか…

いや…、ちょっと引っかかる

とにかく…、その時の私には、正直、今ひとつ計りかねていた

”よし…。とにかく帰ったら、念のためメールをチェックして、あの脂肪付のプーに尋問だ!”

私は車に戻って、自宅へとナビをセットするのだった






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