研がれる私/長編エロティックミステリー

キャスティング完了③



プーさんの分析では、Ｔ子っての、ナチュラルな部分で人に尽くせちゃうタイプなんだろうってさ

言ってみりゃあ、エネルギッシュに優しく接することができる”根”は有していた女ではあっただろうと…

「…高石は賜ってたわ。”Ｔ子は、自分が一番困ってた時に助けてくれた。彼女のおかげでドツボだった気分がどんなに明るくなったか。他の親しい友人なんか、説教ばかりで力になってはくれなかった。もし今度、あの子が困ってた時はオレが力になってやらなきゃって思った…”とな」

高石トールのメンタル形成はごく単純明快

そういうことになるか…


＊＊＊


「で…、かくかくしかじかって流れになったと…。オレなどに言わせりゃあ、Ｔ子と共犯の女によるワナだな。絵に描いたような自己責任事案につき、ご愁傷さまって結論になる」

石渡プーの論建てはおっしゃる通り、異論はない

こちらとしては、トール君のそのメンタル回路を手のひらに乗せればいいんだから

うん、それでうまくいくでしょ

何しろこの私もまた、”一番困ってる時のカレ”をお助けしたことになるんだし

なら、カレのリアクションはもう見えてる

そうなる…

もっとも、それを彼に迫る際、私にすっぴんはない

むしろ、ド派手にケバ化粧だわ（爆笑）


＊＊＊


高石トールとは、翌日さっそく会って、私の首尾を伝えた

「…約束通りカンペキ解決よ。もう、女はあなたに接してこない。飲み屋の女もね…」

「そうか…。それは助かったよ。ありがとう…」

「いいのよ。あなたとはさ、今回は奇妙な出会いだったけど、これも何かの縁よ」

「あのさ…、ひとつ聞いていいか？」

「なに？」

「今回の女の件を解決する交換条件を撤回したの…、どうしてなんだ？オレを仲間に加えること、あっさりと気が変わったって、その理由を聞かせてくれないか？」

さっそくだった

カレは私の思った通りの反応をしてくれた