さよならしたはずが、極上御曹司はウブな幼馴染を赤ちゃんごと切愛で満たす
「それは本当ですか? 本当なら父から私に話があるはずです。私は父からは何も聞いていません。申し訳ありませんが、日を改めていただけませんか?」
幸雄から何も聞かされていないどころか、川岸からもそんなことを聞いていない。完全に彼らの思惑に落ちたように思え、光莉は追い詰められた。
「日を改めるような余裕が、今の山谷食品にあれば、ですが」
律樹が険しい表情でそう言い、おもむろに資料を一枚ずつ捲る。静かな応接室に無機質な紙の音が冷たく響き渡った。
光莉はとてもその資料を見る気にはなれなかった。
「随分、含みのある言葉ですね。それは、どういう意味なのでしょうか?」
「はっきりと申し上げます。このままでは御社のこの先の資金繰りはだいぶ苦しいかと思われますよ。どうやら方々で融資も断られているようですしね。資金ショートまで時間はあまりないと見えます。あなたは、何も知らないようですが……」
律樹の不躾な物言いにさすがに光莉はカチンときてしまった。
「勝手に色々と調べられたようですが、弊社の経営に関することは、社長以外に専務の川岸が対応しているはずです。なぜ、わざわざ私に話を持ってきたのでしょうか?」
「なるほど。これは会社のことであって、自分には関係ない、他人ごとだと?」
律樹の鋭い指摘に、光莉は言葉を詰まらせるものの、それでも黙っていられる性格ではなかった。
「そんなつもりで言っているわけではありません! 他人ごとなわけないじゃないですか。私は社長の娘なんですから」
「そうですよね。先日もお父様の名代を務めていたようですし」
律樹の表情からは、あの創業記念パーティーのことを言いたいのだと読み取れた。
「社交の場では、もちろん代理になることはあります」
「ならば、代理のあなたに話をしても構わないのでは。山谷社長もあなたに会社を任せるつもりにしていたようですから」
「それは……っ」
いつかは、という話だった。
「いつかは……とお考えだったんですね」
「……っ」
じりじりと追い詰められ、光莉はとうとう言葉を失う。
「その、いつかは、ある日突然訪れるものですよ」
律樹は慈愛とも憐れみともとれない複雑な表情を覗かせている。意味ありげな彼の言葉に、光莉は何と言ったらいいのかわからなくなる。氷のように冷たい刃が次々に喉の奥に流し込まれてくるみたいだ。
幸雄から何も聞かされていないどころか、川岸からもそんなことを聞いていない。完全に彼らの思惑に落ちたように思え、光莉は追い詰められた。
「日を改めるような余裕が、今の山谷食品にあれば、ですが」
律樹が険しい表情でそう言い、おもむろに資料を一枚ずつ捲る。静かな応接室に無機質な紙の音が冷たく響き渡った。
光莉はとてもその資料を見る気にはなれなかった。
「随分、含みのある言葉ですね。それは、どういう意味なのでしょうか?」
「はっきりと申し上げます。このままでは御社のこの先の資金繰りはだいぶ苦しいかと思われますよ。どうやら方々で融資も断られているようですしね。資金ショートまで時間はあまりないと見えます。あなたは、何も知らないようですが……」
律樹の不躾な物言いにさすがに光莉はカチンときてしまった。
「勝手に色々と調べられたようですが、弊社の経営に関することは、社長以外に専務の川岸が対応しているはずです。なぜ、わざわざ私に話を持ってきたのでしょうか?」
「なるほど。これは会社のことであって、自分には関係ない、他人ごとだと?」
律樹の鋭い指摘に、光莉は言葉を詰まらせるものの、それでも黙っていられる性格ではなかった。
「そんなつもりで言っているわけではありません! 他人ごとなわけないじゃないですか。私は社長の娘なんですから」
「そうですよね。先日もお父様の名代を務めていたようですし」
律樹の表情からは、あの創業記念パーティーのことを言いたいのだと読み取れた。
「社交の場では、もちろん代理になることはあります」
「ならば、代理のあなたに話をしても構わないのでは。山谷社長もあなたに会社を任せるつもりにしていたようですから」
「それは……っ」
いつかは、という話だった。
「いつかは……とお考えだったんですね」
「……っ」
じりじりと追い詰められ、光莉はとうとう言葉を失う。
「その、いつかは、ある日突然訪れるものですよ」
律樹は慈愛とも憐れみともとれない複雑な表情を覗かせている。意味ありげな彼の言葉に、光莉は何と言ったらいいのかわからなくなる。氷のように冷たい刃が次々に喉の奥に流し込まれてくるみたいだ。