さよならしたはずが、極上御曹司はウブな幼馴染を赤ちゃんごと切愛で満たす
真摯な律樹の訴えに、光莉は言葉を失った。
「私は……」
幸雄をはじめ社員や工場の従業員たちの顔が思い浮かんだ。ささやかながらも温かい会社をこの先も盛り上げていけるようにしたかった。だけど。
悔しいけれど、今の光莉は幸雄の代わりに社長を務められるような器ではない。こんな不安定な状況では社員が離れていくのも無理はないだろう。たしかに彼の言うとおり、虚勢を張っているだけでは、山谷食品を守ることはできない。
迷った末に、光莉は律樹に改めて問うた。
「守ってくださるんですね。うちのブランドに希望を見出したからこそ」
「ああ。そして決定権は俺にある。だから君と直接話をしに来たんだ」
やっと、律樹の真意が見えた気がした。
光莉は縋るように彼に確かめた。
「やっぱり、あなたは、あの……りっちゃんよね?」
すると、面食らった顔をした彼は一拍置いたあと、少し席を外してくれないか、と秘書に声をかけた。
秘書はすぐに「失礼します」と応接室を出て行く。
ふたりきりになってから、少しの沈黙のあと、律樹が口を開いた。
「いいかい? 山谷食品はこのままでは資金ショートで倒産するだろう。そんな状況の会社を見捨てず、わざわざうちが手を差し出す理由を考えてほしい。君がいうブランドがこのまま潰えるのはもったいないと思っているからだ。うちならば、ただ立て直すだけではなく、今まで以上にもっと活かすことができる。叶えられなかったことが叶えられるようになる。それを上に通した」
律樹はそれからドアの向こうにいる秘書を気にするように声を潜めた。
「さっきのは全部、上を納得させるために必要なパフォーマンスなんだ」
事情を知った光莉は目を丸くする。一枚岩ではないということなのだろうか。
「この件を任せてもらえるなら、ブランドを守れるよう、俺がなんとかする。俺は……君を助けたいんだよ」
やはり彼は、昔のまま……やさしい彼なのだ。そんなふうに希望を見出しかけた光莉に、彼は信じがたいことを口にした。
「但し、条件がある」
「条件?」
「君には、俺と結婚してもらう」
「――結婚!?」
茫然とする光莉を、律樹はただまっすぐに見つめた。彼が決して冗談で口にしたわけではないのだと、暗に示すように。
「東京にきてもらうことになるし、常盤家に入ってもらうことになる」
「そんな。待って、待ってよ」
「私は……」
幸雄をはじめ社員や工場の従業員たちの顔が思い浮かんだ。ささやかながらも温かい会社をこの先も盛り上げていけるようにしたかった。だけど。
悔しいけれど、今の光莉は幸雄の代わりに社長を務められるような器ではない。こんな不安定な状況では社員が離れていくのも無理はないだろう。たしかに彼の言うとおり、虚勢を張っているだけでは、山谷食品を守ることはできない。
迷った末に、光莉は律樹に改めて問うた。
「守ってくださるんですね。うちのブランドに希望を見出したからこそ」
「ああ。そして決定権は俺にある。だから君と直接話をしに来たんだ」
やっと、律樹の真意が見えた気がした。
光莉は縋るように彼に確かめた。
「やっぱり、あなたは、あの……りっちゃんよね?」
すると、面食らった顔をした彼は一拍置いたあと、少し席を外してくれないか、と秘書に声をかけた。
秘書はすぐに「失礼します」と応接室を出て行く。
ふたりきりになってから、少しの沈黙のあと、律樹が口を開いた。
「いいかい? 山谷食品はこのままでは資金ショートで倒産するだろう。そんな状況の会社を見捨てず、わざわざうちが手を差し出す理由を考えてほしい。君がいうブランドがこのまま潰えるのはもったいないと思っているからだ。うちならば、ただ立て直すだけではなく、今まで以上にもっと活かすことができる。叶えられなかったことが叶えられるようになる。それを上に通した」
律樹はそれからドアの向こうにいる秘書を気にするように声を潜めた。
「さっきのは全部、上を納得させるために必要なパフォーマンスなんだ」
事情を知った光莉は目を丸くする。一枚岩ではないということなのだろうか。
「この件を任せてもらえるなら、ブランドを守れるよう、俺がなんとかする。俺は……君を助けたいんだよ」
やはり彼は、昔のまま……やさしい彼なのだ。そんなふうに希望を見出しかけた光莉に、彼は信じがたいことを口にした。
「但し、条件がある」
「条件?」
「君には、俺と結婚してもらう」
「――結婚!?」
茫然とする光莉を、律樹はただまっすぐに見つめた。彼が決して冗談で口にしたわけではないのだと、暗に示すように。
「東京にきてもらうことになるし、常盤家に入ってもらうことになる」
「そんな。待って、待ってよ」