もう一度あなたに恋したときの処方箋


関係先を回ってから憲一たちが事業本部に戻ると、鞠子が待っていた。

「お疲れ様でした。こちらのパンフレットの確認をお願いします」

鞠子の顔を見た途端、岡田部長がいつもの調子でペラペラと話し出した。

「ごめんね~。篠原さん、ボク、勘違いしちゃってて~」
「は?」

怪訝な顔をする鞠子を見て、今度は憲一が慌てて言葉を遮った。

「部長、そこまでです! それ以上はこちらから説明しますから黙っていてください」

高木の言葉に、その場にいた事業本部の人間は何事かと驚いた。
鞠子までが憲一の大きな声にビクッと震えたので、慌てて声の調子を変えた。

「篠原君、君のことじゃないよ。部長がチョッとやらかしてね。この後始末はきちんとしておくから」

唖然としている岡田部長より鞠子を安心させようと、小さな声で鞠子に囁いた。

「は、はい?」

憲一は小声を意識していたので、あまりにもふたりの距離が近かった。
頬がみるみるうちに染まっていく鞠子の可憐さに、男性陣はどよめいている。
なんとなく甘い雰囲気を漂わせているふたりを、岡田部長はうんうんと頷いて納得したように見ていた。

その場に居合わせた社員たちは岡田部長がなにをやらかしたか心配すべきだったが、それどころではない。
これまでクールで女性社員に愛想のなかった憲一の豹変ぶりを見て、ふたりの関係を知りたくてたまらないのだ。
恋人なのか、婚約者なのか……。

そんな中で、鞠子の隣の席にいる田村は平然としている。
彼だけは鞠子が事業本部に異動してきた時から、ずっとふたりの様子を見ていた。
憲一の微妙な変化を知っていた田村は、いつかはこうなると予測していたのだ。

(僕はお似合いだと思います)



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