もう一度あなたに恋したときの処方箋


「いや、そういうつもりじゃないから」

私の『気にしないで』という言葉がよくなかったのか、高木さんはますます歯切れが悪い。

「高木さんにはご迷惑おかけしてしまって……」

「いや義弟がすべての原因だったんだ。ご家族にも君が元気になったのを見てもらえたら嬉しいよ」
「でも部長が誤解して、祖母と姉にわざわざ声をかけてくださったなんて申し訳なくて」

高木さんはまた黙ってしまったので、私はじれったい気持ちになってきた。
コーヒーを飲み終わったところで私は席を立つことにした。

「お話がそれだけなら私はこれで失礼します。ごちそうさまでした」

頭を下げると、高木さんの返事を待たずにコートを手にして店を出る。

(高木さんとはいい関係になれたと思っていたのに)

優しい言葉をかけてくれたり、食事に誘ってくれたりしたのはなんだったんだろう。
彼が私を大切にしてくれているんだと思い上がってしまっていた。

(噂が迷惑なら、声をかけてこないで欲しい)
 
なんだか無性に腹が立ってきたので、歩道をカツカツとヒールの音を響かせながら歩いた。

(いつまで義弟さんのことで、私に気を遣うの?)




< 54 / 63 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop