もう一度あなたに恋したときの処方箋



***



憲一は一瞬だけ迷ったが、慌てて鞠子の後を追った。
会計を済ませてから、店を出て左右を見る。すると上り坂を歩いていく鞠子の後ろ姿が見えた。

ダッシュで走った。

「待ってくれ」

坂道の途中で追いつくと、十一月だというのに汗がふき出してくる。

「ゆっくり話がしたかったんだ、君と」

「いつも会社で会ってますよね、私たち」

会社で話せばいいというように、彼女は足を止めずに歩き続けている。

「仕事の話じゃなくて、プライベートでだ」
「プライベートですか?」

やっと立ち止まったと思ったら、憲一に戸惑った顔を向けてきた。
背が高い憲一を少し見上げる格好になるので、思った以上に破壊力のある視線だ。

「私、いつも、いつも待っていました」

「篠原……」

「高木さんが声を掛けてくださるのを」

憲一からの言葉を待っていたと聞いて、胸がギュッと締めつけられた。
そういえば見舞いに行った時『淫乱な女じゃないってわかってもらえたら十分だ』と言っていたが、ほかにも言葉を待っていてくれたのだろうか。



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