もう一度あなたに恋したときの処方箋
「頑張って仕事していたら、私たちの関係が変わるんじゃないかって」
その目が少し潤んでいるようで、憲一は思わず鞠子に触れたくなってきた。
「少しは期待してたんですよ、私……」
唇を噛んで泣くのをこらえているようだ。いや、俺の前で涙を見せたくないのかもしれない。
「すまない。俺はなんていうか……女性の気持ちに疎いというか、慣れてなくて」
つい言い訳にもならないようなことを口にしてしまった。
「モテることで有名な高木さんが?」
鞠子は信じられないというような顔をする。
「モテるっていうのは誤解だよ。こんな時になんて言ったらいいかわからないくらいなんだから」
いつになく憲一は言葉が上手く口から出てこなくて焦っていた。
「君が好きだ」
「え?」
ストレートな言葉しか思いつかなくて、思わず口にする。
いきなり言ってしまったが、目の前の鞠子は耳まで真っ赤になって俯いてしまった。
彼女の顔が見たくて、自然にその頬に手が伸びる。
だが、彼女は男に触れられたくないだろうと思いとどまった。
「こんな俺だが、君のことが好きになっていた」
「私を?」
「そうだ」
「私なんか、ついこの前まで男の人と食事したり話したりできなかったんですよ」
自分に自信がないのだろう。彼女はよく『私なんか』という言葉を口にする。
「わかってるよ」
「私なんか、男の人に慣れてなくて、この年になって戸惑うことばかりで……」
ずっと我慢していただろうに、涙が彼女の頬に零れてきた。
「篠原、俺は君がいいんだ」