イケメン検事の一途な愛


嘘は吐いてない。
連続殺人事件の結審日だから。
冷静を装って、彼女を玄関外へと連れて行く。

「マンション周りに沢山いるだろうから、送ってやれなくてごめんな」
「………」

俺の言葉に失望したのか、彼女は一変して顔から笑顔が消えた。
緩やかに降下する視線とトレンチコートをぎゅっと握る指先。
そんな彼女が気になりつつも、彼女の頭を優しく撫でて。

「気を付けて帰れよ」

俺は心を鬼にして部屋の中に入った。
やり過ぎたか?
久しぶりに会えたこともあるし、マスコミの目がある中、わざわざ来てくれたのだから。
玄関内でジレンマに陥りながらも、最終的にはベタ惚れの俺が負けた。
彼女を追いかけようと玄関ドアを開けた、その時。

「美雨っ?!」

数分の葛藤を玄関内でしたから、当然もういないと思ったのに。
彼女はさっきと同じ場所に立っていた。
しかも、声を出さずに涙を溢しながら。
そんな彼女の涙を拭おうと手を差し伸べると……。

「えっ……」

彼女はトレンチコートの腰紐を解いた。
俺の目に映る彼女は、『来栖 湊』として始めて会ったあの時と同じような姿で。

「とりあえず、中に入って」

無言の彼女の腕を掴み、玄関の中に引き入れる。
振り返るのが怖い。
だけど、現実はリセット出来ないように……。

ゆっくりと振り返ると、トレンチコートから覗くそこには、水玉柄のワンピースの胸元が破かれ、下着が露わになった彼女が。
こんな事になっているとは知らず、元気な彼女だったから冷たくあしらったのに。
後悔してももう遅い。

唇を噛み締め、バスルームへと彼女を連れてゆく。

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