イケメン検事の一途な愛
「喧嘩売ってんのか?」
焦り始めた男は俺に鋭い視線を向けて来た。
「刑法177条 強制性交等罪、刑法178条 準強制わいせつ及び準強制性交等罪は刑事訴訟法第235条の改正に伴い、親告がなくとも罰するとある」
「はっ、こいつイカれてるな。そんなんで脅しても無駄だぞっ」
「あぁ~未遂か?だとしても、刑法180条 未遂罪に該当するな」
売り言葉に買い言葉。
そんなことにいちいち引っかかるくらいなら検事なんてやってねぇ。
「言っとくが、この女が先に色仕掛けで迫って来たってのッ」
往生際が悪いとはこのことだな。
「ねぇ、あの人、来栖 湊じゃない?」
来栖 湊?
どこかで聞いたことのあるような名前。
憤慨する男の声を聞きつけ、エレベーターの周りに野次馬が集まりだした。
中には動画を撮る者までいる。
この辺で片付けるとするか。
「あ、悪い」
女性の肩に掛けた自身のジャケットの内ポケットから名刺入れを取り出して。
「最高検察庁 刑事部所属の検事、久我です。告訴するならご連絡を」
わざと野次馬の視線がある中、女性に堂々と名刺を差し出す。
「他に乗る人いますか?」
【▽】ボタンを押しておいた為、エレベーターが来たようだ。
何事もなかったようにその場にいる人たちに声を掛ける。
けれど、空気を察してか、名乗り出る人はいない。
「彼女が告訴し送致されたら、この手で起訴してやるから覚悟しろ」
男を睨み返し、彼女の腕を掴みエレベーターに乗り込み【閉】と【B2】を押す。