イケメン検事の一途な愛
「怪我は?」
「大した事ありません。……有難うございました」
降下するエレベーター内。
あえて視線を外しフロア表示を見上げていると、彼女は【1F】を押した。
「車で来てないのか?」
「………はい」
タクシーで帰る気なんだ。
その格好でタクシーに乗り込んだら通報されるだろ。
「ん、口元拭いた方がいい」
スラックスのポケットからハンカチを取り出し差し出すと、彼女は気まずそうに顔を背けた。
そんな彼女の髪に手を伸ばし、髪留めとそっと外し手櫛で梳く。
「何があったのか知らないが、嫌なことは忘れられるなら忘れた方がいい」
綺麗に落とせるわけじゃないが、何もしないよりはマシだろうから。
ハンカチを受け取らず、手で拭っている彼女の手を掴み、俯く彼女を覗き込むようにしてハンカチで優しく拭う。
エレベーターが1階に停止した。
ジャケットを俺に返そうとする彼女の腕を掴む。
ゆっくりとドアが開き、ドアの前にいる人と視線が合う。
明らかに暴行されたと思われる格好の彼女を背後の隠すようにして数秒待つ。
けれど、乗り込んでくる気配が無いため、素早く【閉】ボタンを押した。
ドアが閉まり、再びエレベーター内に気まずい空気が漂うが、地下駐車場2階はすぐ着いた。
「その格好じゃタクシーにも乗れないぞ?」
「………」
「送ってやる」
もっと優しい言い方をしたらいいんだろうけど、何でかな…。
今の彼女に優しく接するのは同情してるようで、返ってプライドを傷つけてしまいそうで。