イケメン検事の一途な愛
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「もう少ししたら仕事に行くけど」
「………はい」
「家の中の物は自由に使っていいから」
「………はい」
「それと、これに住所と暗証番号書いといたから」
「………すみません」
午前7時25分。
そろそろ自宅を出る時間。
普段何気なくしていることが、今日はスムーズにいかない。
別に彼女が邪魔しているとかではないんだが、女性に見られてるという感覚がどうも慣れなくて。
Yシャツにネクタイ姿で、腕時計を着けながら彼女に声を掛ける。
彼女はそんな俺をじーっと見ている。
彼女が自分の恋人だったら……。
多分、放っておけなくて仕事を休むだろうな。
何をするか分からないし。
もしかしたら、病院を抜け出したみたいに、ここから無言でいなくなるかもしれない。
けれど、知り合いというだけで俺に口出す権限はない。
帰りたければ帰るだろうし、行きたい場所があるならきっと行くだろう。
そんな風に思えて、俺はあえて聞かずに仕事に行くことにした。
名刺の裏に住所を書いておいたから、何か食べるものを注文するなら出来るだろうし。
家の暗証番号を書いておいたら、何かを買いに出たとしても戻れるだろう。
とはいえ、変装グッズもなく出かけるとも思えないが。
ジャケットを羽織り、鞄の中身をチェックしていると。
「あの……」
「……ん?」
「ちゃんとお金は払うので、……暫くここにいてもいいですか?」
「へ?………あぁ、それは全然構わないけど」
相槌や返事でなく、彼女の言葉で。
しかも、………ここにいたいと。
「行ってきます」
無意識に彼女の頭を撫でていた。