イケメン検事の一途な愛


事前に注文しておいたお弁当を受け取り、小走り気味に自宅へと向かう。

マンションのエントランスを抜け、エレベーターに乗り込む。
こんなにも正常心を保つことが出来ないなんて、何年ぶりだろう。
普段から冷静さを失わないように心掛けているため、仕事が手につかないなんてこと無かったのに。

暗証番号を入力し、玄関ドアを開けると彼女のサンダルがあった。
リビングドアを開けると、彼女はリビングでヨガをしていた。

「あ、おかえりなさい」
「………ただいま」

何だろう。
このとてつもなく安堵感に笑いが止まらないのは。

「何ですか?それ……」
「……お弁当。お昼食べてないでしょ」
「わぁ、有難うございます」
「消化に良さそうなものにしたから」
「デキる男は違いますね」

昨夜から今朝までの彼女とは別人だ。
2カ月前の彼女の姿が重なるほど、昨夜の出来事が嘘だったように思える。

何事もなかったように、俺の知る明るい彼女がそこにいた。

元気になったんだね。
もう大丈夫なの?
問題が解決したのかな?
……なんて言葉をかける勇気もない俺は、完全にスルーしてお弁当をテーブルの上に置く。
冷蔵庫から取り出した飲み物を彼女に手渡し、ソファーに腰かけた。
昼休みが沢山あるわけじゃない。
一応、国家公務員だから就業時間は決まっている。
歩いて数分の距離だが、のんびりはしていられない。

「仕事に戻らないとならないから、先に食べるな」
「あ、はい。私のことは放っておいて大丈夫ですから」

ノーメイクの彼女はどこかあどけなさが残る感じで。
素顔でも十分美人だ。
俺に対して恥ずかしそうに俯き加減なのが、ほんの少し特別感を覚えた。

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