イケメン検事の一途な愛

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「凄い量だな」
「傷むものは最小限にしてあります」
「フッ、……これで?」

生姜焼きとひじきの煮物、ポテトサラダとお味噌汁。
本当にオーソドックスな夕食を食べ終え、彼が珈琲を淹れてくれるというので2人でキッチンへ。
私が食器を片付けている隣で彼は珈琲を淹れながら、キッチンの至る所に食材や調味料などが置かれていて呆れ返っている。

「気を遣わなくていいのに」
「家賃だと思って下さい」

ただではここにいられない。
せめてもの気持ち。

「ここ、賃貸じゃないから」
「え?」
「家賃は発生してない」
「……あぁ、なるほど」

冗談だと分かるけど、彼が困っているのも分かる。
勝手に買い揃えて、所狭しと荷物を置くのが嫌なようだ。
喘息の発作持ちだから、ミニマリストまでとは言わないが、彼の家は、物はそれほど多くない。
恐らく、あえて増やさないようにしているのだろう。

「明日、戸棚とかに仕舞えるものは仕舞っておきます」
「フフッ」
「ホントです!」
「ハイハイ」
「……ごめんなさい」
「いいよ、……別に」
「ッ……」

食器を濯いでいる私の頭を優しく撫でる彼。
不意にされるこういう仕草にドキッとしてしまう。
ドラマや映画で何度も経験済みなのに、何でかな。
演じてる時には感じない感情だ。

「洗い終わったらおいで」
「……はい」

恋人と過ごす日常ってこういう感じなのかな?
週刊誌などで熱愛報道はしょっちゅうされるけど、実際に誰かと交際したことは一度もない。
いつもいいように勝手に扱われ、売名行為の餌の地位は揺るぎない。

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