イケメン検事の一途な愛
来た道を戻ろうとした、その時。
不意に思い出したとある場所。
「行ってみようかな」
金曜日の夜だから、もしかしたら混んでるかもしれない。
仕事終わりのOLさんのデートコースで人気の場所だから、人気が多いのも覚悟の上。
だけど、雨が降っていることと、ノーメイクだし髪も別人みたいな状態だし。
すれ違う人と視線が合うこともないから……。
普段来れないからこそ、この機会を逃したくない、そう思った。
小雨が降りしきる中、傘に当たる雨音を楽しむように手を空にかざす。
冷たい雨粒が指先に落ち、それがあの頃と同じく心地よくて。
本名の『美雨』という名前。
両親が雨が好きだったこともあり、名づけられた名前だ。
大学生の時、いつも雨の日に桜色の傘を差す母に父が一目惚れしたらしい。
雨の日は憂鬱になりがちなのに、母はいつだって楽しそうに桜色の傘を差していたと。
だから、美しい雨の日をいつでも感じていられるように。
通販で買った折りたたみ傘。
勿論、桜色。
急場しのぎで買ったものだけど、こうして両親に会うために差したものだから特別な感じがする。
中目黒の駅を渋谷駅方面に10分ほど歩いて辿り着いた場所。
四角い建物に満月の月が落ちて来たみたいな……ちょっとロマンチックな建物。
渋谷駅から程近い場所にある『コスモプラネタリウム渋谷』
小学生の頃によく遊びに来た場所。
「懐かしいな」
19時を過ぎようとしている今。
そろそろ閉館の準備が始まる頃だ。
満足そうな笑みを浮かべ建物から出て来る人を眺めながら、私は逆らうようにその奥へと向かった。