離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
 今日は純玲が会議室の担当になっていた。自社ビル15階の西側にある会議室エリアには大小12の会議室が並んでおり、それぞれの部屋には“北京”“パリ”“ニューヨーク”など、世界の主要都市の名前が付けられている。
 社内では『打ち合わせでちょっとローマまで行ってきます』的な冗談が鉄板だったりする。

 時間は既に定時を過ぎている。この時間でも会議が行われていることもままあるのだが、手元のタブレットで予約システムを確認すると予約は入っていないようだ。
 
 純玲は手前の“ソウル”に入室し、テレビ会議システムの電源の状況や、忘れ物の有無、ホワイトボードのマーカーが切れていないかなど確認していった。今の所どの部屋も問題がないようだ。

(肇さん、今日も残業って言ってたっけ……)
 作業を進めながら純玲はふと恋人に思いを馳せる。

 純玲は社内恋愛をしている。相手は佐久間肇(さくまはじめ)という新規事業開発室に所属する3つ年上の男性だ。
 知り合った切っ掛けはインターンの受け入れの件で彼から相談を受けたことからだった。

 見た目も爽やかで優し気な顔つき、人当たりがよく社交的な性格で仕事ができ、出世が見込まれているという肇は社内の女子にとても人気があった。そんな彼が自分にアプローチしてきた時は冗談かと思った。
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