俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない

「お前はなにをしてるんだ」

スマホを持ちながらひとりであたふたと慌てている私の隣に幸也さんが腰を下ろす。そのとき、スマホから『もしもし』と低い声が聞こえた。

父が電話に出たのだ。急いでスマホを耳に当てる。

「もしもし、芙美です。今、時間大丈夫?」
『問題ない。どうかしたのか』

まだ会話を始めたばかりだ。なにも怒られる理由がないのに、父の声を聞くとどうしても怒られていると錯覚してしまう。

「あ、あの、実は、その……」
『どうした。はっきりと言え。時間の無駄だ』
「ごめんなさい」

父が目の前にいるわけでもないのに体が委縮してしまう。

肩をツンツンと突かれて、隣を見ると幸也さんが口の動きだけで〝お父さん?〟と電話の相手を尋ねてくる。私は首を振って頷いた。

『芙美。要件を早く伝えろ』

父の声が耳に届く。深呼吸をして、なんとか自分を落ち着けてから口を開いた。

「お父さんにお願いがあるの。山之内さんの連絡先を教えてほしくて」
『山之内くんの?』

父の声と同時に隣からも「はぁ⁉」と、低い声が聞こえた。

幸也さんを見ると〝なんであいつの連絡先なんか聞いてるんだ〟とでも言いたそうに、ものすごくこわい顔をしている。

それについてはあとで説明することにして、とりあえず今は彼からそっと視線を逸らした。
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