俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない

「お父さん……」
『すまなかった、芙美。お前が医学部に落ちてしまったのは母さんが亡くなったショックが大きかったんだよな。わかっていたのにフォローしてあげられず、すでにつらい思いをしていたお前に追い打ちを掛けるように医学部の受験に失敗したことを咎めてしまった』

母が亡くなったのは受験半年前のことだった。そのショックを引きずって勉強に身が入らず、受験当日もふとした瞬間に母のことを思い出してなにもかもうまくいかなかった。私の心が弱かったのだ。

『すまなかった、芙美。私は随分とお前のことを苦しめてしまった。今さら謝罪したところで私の過去の発言が消えるわけではないが、どうか謝らせてほしい』

突然の父の言葉にどう言葉を返せばいいのかわからない。

『近くに早瀬くんもいるのか。さっきからたびたび声が聞こえるが』
「うん、隣にいる」
『代わってくれるか』

耳からスマホを離して、それを幸也さんに渡す。

「父が、話したいそうです」
「わかった」

静かに頷いた彼が、ゆっくりとスマホを耳に当てた。

「もしもし。お電話代わりました」

そっと幸也さんに近付いて、スマホから漏れてくる父の声に耳を澄ませる。

『早瀬くん、久しぶりだな。元気にしているか』
「はい。私も芙美さんも元気です」
『そうか。それはなによりだ』

一瞬黙り込んだあとで、父はあらたまったように言葉を告げる。
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