壊れるほどに愛さないで
雪斗が連れてきてくれたのは、自宅から歩いてすぐの焼き鳥屋『おりおん』だった。大通りから筋を二本ほど奥に入っているお店で、四国の地鶏を使った炭火焼き鳥の専門店だ。

暖簾をくぐった雪斗の後を私も着いていく。

「お、雪斗、久しぶりだね」

「うん、勇気(ゆうき)さん、久しぶり」

頭にタオルを撒きながら、炭火で焼き鳥を転がす大将が、雪斗の後に続いて入ってきた私を見ると、すぐさま強面の顔を緩める。

雪斗に勇気さんと、呼ばれた男性が、このお店の大将のようだが随分と若い。

「へーっ、今日は美人さんとデートか。雪斗もいよいよ、結婚か?」

結婚という言葉に一瞬、友也の顔が思い浮かんだ。結局、ラインメッセージの返信をしないまま、雪斗の誘いを断りきれず、こうして食事にきてしまったことに、小さな罪悪感を感じる。

「勇気さん、彼女困ってるから。それにまだ付き合ってもないし」

「そっか、じゃあ雪斗頑張らないとな」

「まあね」

雪斗は、くったくのない笑顔を大将に向けながら、私を振り返った。
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