壊れるほどに愛さないで
「美織、こっち」

雪斗にとっては、ただの社交辞令なんだろう。

それでも、『まだ』というフレーズが頭の中から離れない。私は、思わず胸元を抑えながら、雪斗と一番端っこの、2人掛けテーブルに腰をおろした。

「勇気さん、焼き鳥おまかせ二人前と、ビールとウーロン茶、あと、豆腐サラダ頂戴」

「あいよっ」

威勢の良い返事が厨房から、返ってくると、すぐに飲み物だけが先に運ばれてくる。

「じゃあ、今日もおつかれっ」

「あ、お疲れ様」

何となく、お互い少し照れ笑いしながら、飲み物を口に含む。

「此処さ、勇気さんの実家で大学の写真サークルの溜まり場だったんだよね。大将の勇気さんは、3つ年上の先輩だったんだよ」

雪斗は、目線を、すこしだけ上げると、壁際の額縁に入れられた写真を指差した。

見上げれば、27期写真サークルと印字された集合写真が、飾られている。
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