壊れるほどに愛さないで
「はい、お待ちどう様!」

私が口を開こうとした時、勇気が私達の目の前に、出来立ての焼き鳥盛り合わせと豆腐サラダを置いた。

「うまそ」

雪斗が、割り箸に手をかける。

「あ、雪斗、お前展覧会いくのか?」

勇気が、腰に手を当てながら、雪斗を見下ろした。

「そうすね、勇気さんは?」

「あー、俺は、やめとこうかな」

「彼女さんすか?」

「どうだろねー」

ニヤついた勇気が、雪斗を小突いた。

「お前も頑張らないとな」

勇気は、私に目配せすると、また厨房に戻っていく。雪斗と2人だけの空間に、途端に緊張してくる。

「困ってる?」

「え?」

雪斗が、唇を引き上げた。

「でも……美織が気になるのは本当。迷惑なの分かってんだけど」

「えと……私……」

迷惑なんかじゃない。私も雪斗が気になるのは本当だから。でもそれを言えるには、あまりにも今の私は、宙ぶらりんだ。

「正直言うと、美織を困らせたい訳じゃないんだけどさ、かと言って、美織ともっと話して、もっと一緒に過ごしたいなって……出会ったばっかで、好き嫌いとか、そう言うのと少し違ってて……何だろ、ごめん、俺も理由は分かんない」

雪斗が、私と同じ事を思っていたことに驚いた。私もなぜ雪斗から目が離せなくて、側にいるだけで、鼓動が早くなるのか理由が分からない。

私は、雪斗へ何て返事をしたらいいのかわからなくて、取り皿に豆腐サラダを取り分けると雪斗の前に、コトンと置いた。
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