壊れるほどに愛さないで
「ありがとう」

「あ、うん」

私は、豆腐サラダを口に運びながら、雪斗をチラッと見る。すぐにパチリと視線が合って、私が慌てて俯くと、雪斗が笑った。 

「そんな、驚かなくても。取って食べたりしないし、って俺が、言っても説得力ないか」

雪斗が、クククッと笑った。

「もう、雪斗……」

「あ、思い出した?」

私は、意地悪く笑う雪斗を見ながら、雪斗に押し倒された事を思い出すと、緊張で乾いた口内をウーロン茶で湿らせた。

雪斗が、また、子供みたいにケラケラと笑う。

雪斗は、よく笑う。雪斗の笑顔は見ていて飽きない。そして、雪斗の笑顔を見ると、何故だか、あのスノードロップの男の子を思い出す。そんな筈ある訳ないのに。

「ね、美織ってさ、雪の降る街って住んでたことある?」

「雪の降る街?」 

思わず聞き返していた。

何故、急にそんなことを雪斗が聞くのか分からないが、私は雪の降る時期に、祖母のお葬式であの、男の子に出会った。私が、雪の降る街に行ったのは、あの時が、最初で最後だった。

「ずっと、父の仕事の関係で都会にしか住んでないの。雪を見たのも……小さい時だけかも」

スノードロップの男の子の事を思い出しながら、私は、ふっと笑った。
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