壊れるほどに愛さないで
焼き鳥屋から出ると、雪斗は、両手をスラックスのポケットに突っ込み、私と少しだけ距離をとって歩き出す。 

私は、伸ばしそうになる掌をぎゅっと握りしめたまま、雪斗の隣を並んで歩いていく。

「ごめん、煙いかないようにするから、煙草吸ってもいい?」

長身の雪斗が、私を覗き込むように、少しだけ屈む。

「あ、外だし、全然大丈夫だよ」 

(けむ)たかったら、引っ叩いて」

雪斗が、ニッと笑って、私も思わず笑っていた。

「美織の笑顔って……」

「え?」

雪斗の頬が、少しだけ赤いのは気のせいだろうか。

「いや、何でもない。これ以上口説くのも何だし、美織困らせたくないから、ってもう困らせてるよな」

雪斗は、夜空に輝く月に向かって、白い煙を吐き出した。あのスノードロップの男の子と、雪の中、互いに白い呼吸を吐き出しながら、雪空を見上げた事を思い出す。

「お、雪だ……」

見上げれば、まだ11月なのに、小さな白い水玉が、ふわりふわりと舞い降りてくる。テレビのニュースで見た、今年は厳冬というのは本当なのかもしれない。

私は、魅入るように藍の空を眺めた。


「わぁ……綺麗」

「真っ白だな、美織の好きな色」
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