壊れるほどに愛さないで
何故、私なんだろう。背格好や雰囲気が似てるからと言っても、私は、美野里じゃない。全くの別の人間だ。  

私と美野里に共通点があるとすれば……雪斗?

でも、雪斗と私が出会ったのは、最近の事だし、互いが初恋の相手だと知ったのも、先日の事だ。

(やっぱり、分からない……どうして私だったの?)

「美織さん」 

「あ、はい」

私は、慌てて検索画面を削除すると、隣から私を見下ろしている雪斗と目線を合わせた。

「この資料、お願いします」

「はい、揃えておきます」

書類には、付箋がついている。すぐに開くと、雪斗の手書きの文字が並んでいた。

『ごめん、今から益川部長と同行で東都大学附属病院のアポイント入った。必ずタクシーで帰って』

私は、黙って頷いた。

「待野ー、行くぞ。そのまま直帰だから」

「はいっ」

益川部長が、立ち上がりジャケットを羽織を羽織ると、雪斗も立ち上がり、重そうな鞄を持ち上げた。

「じゃあ、お先に失礼します」

雪斗が、心配そうな顔をしているのが、分かった私は、にこりと微笑んだ。

「お疲れ様でした」

このくらいしか雪斗に返してあげられないのが、もどかしい。そして、益川部長と雪斗の後ろ姿を見送ってすぐだった。

制服のスカートのポケットが震える。

私は、スマホをすぐに取り出すと、思わず二度見して、すぐに立ち上がっていた。  

「美織?どうかした?」

「あ、ちょっとお手洗いに」

「あ。そう、ごゆっくり」

私は、和に微笑み返すとすぐに、事務所から、外へ飛び出した。


ーーーー電話の相手は、『非通知設定』だった。
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