壊れるほどに愛さないで
一瞬その声に、私の体は、ビクンと震えた。 

そんな訳ない。だって、その声は、とてもよく知っている声だから。

「クソッ……邪魔が、はいったな。美織またすぐ会いにくるから」

男は、私の頭をそっと撫でると、あっという間にワンボックス車で走り去っていく。すれ違いざまに車のナンバーを確認しようとしたが、ナンバーは、黒く墨のようなもので塗りつぶされていて分からない。

「美織!怪我したの?!大丈夫?!美織!」

まだ、信じられない。
どうして、彼が目の前に居るのか。
なぜ、此処が分かったのか。

私は、抱きしめられたまま、震える唇で、その名を呼んだ。



ーーーー「と、もや……」
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