六月の月に愛を誓う。
「…はい」


気を遣ってくれたのか、一人残された保健室で目を伏せる。

…律希は、どう思ったかな。

ずっと絢斗と再会したことを話さないといけないと思っていたけど、律希にどう思われるか怖くてずっと話せなかった。


…ううん、本当はそんなのただの言い訳で、私がまだ完全に絢斗を忘れられていないからだ。

忘れたつもりでいても、会ったらあの頃の一緒に過ごした思い出が蓋を切ったように溢れてきてしまい、頭が絢斗でいっぱいになってしまう。

絢斗のことが今も好きなわけじゃない。

私が今好きなのは、紛れもなく律希だから。

だけど絢斗との過去に囚われていることは事実で、それを律希にどう説明したらいいのかがわからない。

もしかしたら振られてしまうかもしれない。

それが一番怖いんだ。律希と離れることが一番怖い。


「美緒先輩」


ぎゅっと握りしめていた拳にそっと手を添えられて、勢いよく顔を上げる。


「律希…っ」
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