六月の月に愛を誓う。
あ、ダメだ。律希の顔を見たら、なぜか泣きそうになってきた。


「もう体調は大丈夫?」

「うん…っ、あの、本当に絢斗のことは何もないの。信じて…っ」


律希に縋り付くように腕を掴む。

…が、体を傾けすぎたせいで落ちそうになり、支えてくれた律希に思わずしがみつく。


「ご、ごめ…」


謝ろうと顔を上げた拍子に、律希にキスをされる。

突然のことに目を瞬かせる私を、そっと顔を離した律希が見下ろしてきた。

…すごく、冷たい視線で。


「こんな風に絢斗さんともキスした?」

「…え?」

「そりゃ美緒先輩に元彼がいるって話を聞いた時は、すげぇ嫌だなって思った。だから俺も詳しくは聞かなかったし、今の今まで忘れてた。なのに、先輩は俺の知らないところで元彼と会ってたんだな」

「ち、ちが…っ、会うって言っても毎回偶然で…」

「わかってるよ。美緒先輩と絢斗さんの間にどんなことがあったかなんて知りたくもないけど、だけど隠すのは違うだろ…。たしかに嫉妬しちゃうと思う。だけど、過去はどんなに足掻いたって変えられないし、なかったことになんてできない。だからこそ、話してほしかった。何もないってわかってるけど、隠されたら嫌でも疑っちゃうだろ。先輩が今誰を好きなのか、疑っちゃうんだよ…」
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