エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む
いつもより速足で昴さんが歩いている気がして、私は顔を上げる。
少し歩くと、はっとして気付いたように私のペースに合わせてくれた。
少し空気が重たく感じて、空気を変えるように言う。
「あ、そうだ。今日、夕飯は兄の家でどうだって誘われたんです。ちょっと作り置きもしてあげたいので行ってきますね」
「……そうか」
「最近、兄も早く帰ってゆっくり休めるみたいです。昴さんが先生を増やしてくださったおかげなんですよね。ありがとうございます」
私が言うと、昴さんは少し困ったように眉を下げる。
「いや、礼を言われるようなことじゃない。自分のためだから」
自分、というより病院のためなんだろうな、と当たり前のように思う。
「でも、昴さんは前にもまして忙しそうですけど……少しはお休みできそうですか?」
「今はまだ。もう少し、かな」
「そうですか……」
やっぱりまだ忙しいんだ。
いつだって昴さんは前に出て頑張ってしまって、それが心配でもあった。
そんな昴さんともっといたいだなんて、私の我儘が本当に我儘なんだと突きつけられる。