エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む
その日、機嫌よくルンルンと買い物をして兄の家に向かうと、兄は19時ごろには帰ってきた。
一緒に暮らしていたころは0時越えなんてザラだったけど、本当に早く帰れるようになったんだ、と思う。
久しぶりに一緒にキッチンに立つと、たった一年前まで当たり前に立っていたのが懐かしくなった。
今日のメインはてんぷら、それに作り置きのために副菜をいくつか作っていた。
準備が済むと、兄が天ぷらを揚げていく。
隣で私が茄子の煮びたしときんぴられんこんを作っていると、兄は話し始めた。
「もうずいぶんいいみたいだな」
「おかげさまで。階段から落ちて頭打って手術までしたのに、私の身体は頑丈すぎるわよね」
「助かったのも運が良かっただけなんだから……二度とあんな怪我をするなよ」
9ヶ月前、病院の階段から落ちて、頭を強く打った。
落ちた段数も多くて、打った場所も悪かったけど、病院だったのが幸いした。
落ちた場所が場所なら、もうこうして兄の横に立っていることも、
昴さんのそばにいることもかなわなかったから。
確かに私は、本当に運が良かった。
「味覚の方は?」
「それはまだ……あ、でも、めちゃくちゃ辛いものや苦いものはわかるのよ」
「そうか」
兄が表情を曇らせたのを見て、空気を軽くするように明るい声で言う。
「そんな顔しないでよ。今、幸せだし。ごめんね、八つも年下なのに先にお嫁に行って幸せになって」
「一年だけのクセに」
「うん。だから、幸せなんだよ」