エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む

 食事が終わった帰りみち、これから大阪に戻るという優太先生と二人で駅まで行くことになった。

「すみません、今日は。お恥ずかしいところばかり見せてしまいました」

 食べる時も、優太先生のより多く私に差し出した兄に恥ずかしくなって怒った。
 すると、兄は『通常これくらい食べてたと知っておいてもらった方がいいだろ』と訳の分からないことを言って私はますます怒り、兄妹喧嘩が勃発したのだ。

 そんな失態を見せたあとなのに、優太先生は優しく笑う。

「僕、兄弟の年が離れてるから、あまり喧嘩しなくて憧れたよ」
「何歳離れてるんですか」
「弟たちは十二以上離れてる」
「うちより離れてますね!」
「うん。下に3人いてね、だから早く家を出て、それから一人暮らしだから、料理もちゃんとしてなくて。今日、久々にちゃんとした家庭料理を食べた気がしたよ」

 それならそれでもっとおいしいものを作ってあげれば良かった、と反省してしまう。

「すみません。味も……本当に突然だったし、優太先生が来るってわかってたら適当に調味料入れるんじゃなくてちゃんと計ったのに」
「すごくおいしかったよ」
「本当ですか? よかった……」

 味がわからない分、人からの評価しかおいしいかまずいかわからない。ほっとしたとき、駅が見えた。
 見送ろうとすると、優太先生は私に向き合いゆっくり口を開く。


「聞いたんだ、今の結婚は一年だけだって」
「兄さん勝手に……」
「ごめんね。僕が諦めきれなくて、根掘り葉掘り聞いてしまっただけなんだ。神也先生は悪くない」
「……どういう」

 意味がわからなくて聞き返そうとしたところで、優太先生ははっきり言った。

「僕は香澄ちゃんが好きなんだよ」
「……え?」

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