内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
「吉川部長、お久しぶりです。本社に戻られていたのですね」

「宮島さん、久しぶり。ただの一時帰国で明日には向こうに戻るよ」

「そうですか。寂しいです」

巻いた長い髪をひとつに結わえ、白いボウタイブラウスにオフピンクのタックスカート姿の宮島は、卓也が第一事業部にいた時の部下だ。

二十九歳で入社八年目になるが、同期の大半が係長に昇進しているのに彼女は主任にも昇格できずにいる。

宮島が力を注いでいるのは美容やお洒落で、どうしたら仕事にも興味を持ってもらえるかと、直属の上司だった時に卓也は悩んだ。

彼女の気持ちを理解しようと定期的に面談したり、直接指導してやる気を引き出そうとしたりと、上司として真剣に向き合ったつもりだ。

しかしそれが彼女を勘違いさせてしまったらしい。

やけに接近して話しかけてくると思っていたら、ある日の仕事帰りに告白されて驚いた。

『もしかして私から好きだと言われるのを待っていらっしゃるのですか? 部長は意外と弱気なんですね。心配されずとも、私も同じ気持ちですので大丈夫ですよ』

その時の強気な笑みや言葉には、卓也に好かれているという自信が透けていた。

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