内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
(卓也さんの言い方だと、まるで私が楽しんで童話を読んでいるみたいじゃない。あれ? 間違っていないか。幼児向けのしかけ絵本だって面白いと感じるもの。私は全ての本が好き)

フフッとひとり笑いした果歩に、卓也が「ん?」と眉を上げた。

「自分の本への愛を再確認していただけです。卓也さんに出会えたのも本のおかげですよね」

「そうだな」

振り返っているような顔の卓也を見つめ、果歩も四か月ほど前を思い出す――。



まだ寒い二月下旬の風が強い日。

深緑色のエプロンを着た果歩は書店のレジカウンター内に立っていた。

この森ノ屋書房は都内に十六店舗あり、全国展開もしている大型書店で、大学を卒業して正社員として就職し、二年目である。

子供の頃、誕生日やクリスマスプレゼントは決まって本だった。

人気のおもちゃやゲームを友達に自慢されても少しも羨ましいと思わなかったのは、本が大好きだからである。

魔法使いや探検家、お姫様に可愛い猫、本の世界に入ればなににだってなれて、いつも胸を高鳴らせていた。

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