内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
小学二年生の時には学校の図書室の本を読破して先生に驚かれ、近所の市立図書館の児童書を読み尽くしたのは四年生の時だ。

『果歩は本中毒だね』と笑ってくれた優しい母親は残念ながら五年前に病死し、父親は連絡先すら知らないので、それ以来、十歳年上の兄が半分親代わりで果歩の世話を焼いてくれた。

真面目が服を着て歩いているような兄には堅実で安定した公務員になることを勧められたが、果歩は反対を押し切って森ノ屋書房の就職試験を受け、合格した時には舞い上がるような喜びを味わった。

あとひと月ほどで二年目を終えようとしている今も喜びは変わらず胸にあり、愛しい本に囲まれて仕事ができる毎日を幸せに思っている。

時刻は二十一時三十分。

駅前通りに面し、オフィスビルや商業ビルが立ち並んだエリアにあるこの店舗の閉店時間は二十二時で、正社員の果歩もアルバイト店員と同じようにシフト制の勤務形態である。

広々とした店内には仕事帰りとおぼしき客が十人ほどいるだけで、この時間は忙しくない。

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