内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
(私って馬鹿。連絡先を消されたのにどうやって知らせるのよ。あっ、日星製薬に勤めてるって言ってたから、会社に電話を……駄目か。別れた恋人からの連絡なんて面倒ごと以外にないでしょう。電話に出てくれないと思う。それに、もし連絡できたとしても――)

いいところのお嬢様と婚約中の卓也が、果歩を選ぶ可能性はない気がした。

(手切れ金を渡そうとする人だもの、お金を払うから堕ろしてくれと言われそう)

果歩はお腹にそっと両手をあててみた。

小さな命が育っているのを想像したら、愛しくなる。

窮地に追い込まれている状況なのに、口元には自然な笑みが浮かんで心が前向きになった。

(可愛い私の赤ちゃん。この子を守れるのは私だけなんだから、強くならないと。絶対に産んで、父親がいなくたって幸せにしてみせる。そのために動きだそう)

覚悟を決めたその時、スマホが鳴った。

【もう十五時過ぎたぞ。来る気があるのか?】という兄からメールだ。

昼過ぎに帰ると連絡していたため、約束を忘れたのかと思ったのかもしれない。

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