内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
カウンター内にいるのは四十五歳の男性店長と果歩のふたりで、店長はパソコンで新刊の発注作業をしており、果歩はポップを書いていた。

ピンクの画用紙にマジックや色鉛筆で本の魅力を綴る。

【ほっこりしませんか? 美味しくて優しいお茶漬け屋さんのライトミステリー。読み終えたらお腹と心がポカポカします!】

脇にお茶漬けのイラストも描いて店長に見せると、無言で親指を立ててくれた。

ややいかつい顔の店長の指導は厳しく、入って数日で辞めてしまうアルバイトも少なくない。

果歩もきつく叱られたことが何度もあったが、仕事ぶりを正しく評価して褒めてもくれるので苦手に感じたことはない。

完成したポップを飾りにいこうとカウンターを出たら、すぐ横の自動ドアが開いた。

強い夜風とともに入店したのは、仕立てのいいスーツにグレーのコートを羽織ったビジネスマン風の青年だ。

百八十センチを超えていそうな長身でスタイルがいい。

甘口のやや垂れ目と凛々しい眉を持つ美青年は、風で乱れた柔らかそうな前髪を煩わしそうにかき上げていた。

その姿に大人の魅力を感じて果歩の鼓動が跳ねた。

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