内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
「こんな感じの本、という曖昧なものでもお探ししますよ」

「ありがとう。実は上司からある問いを投げかけられて、満足させられる返事ができなかったんだ。正解を求めてここに来たんだが……」

自嘲気味に笑った彼は、残念そうな目を書棚に向けた。

「安易に答えを探しに来てしまったが、本に頼ってはいけないと気づいたところ。自分の頭で考えないとな」

最後は自分に言い聞かせるように呟いた彼に、果歩は内心ムッとした。

本が役に立たないと言われた気がしたからだ。

こよなく本を愛する果歩は挑戦状を突きつけられた気持ちで強気に言い返す。

「本に答えがないなんて、そんなことはありません。本は人類の英知と想像力の結集で、本以上に価値あるものは命だけです。私に生きる喜びを教えてくれたのは本。本は私の人生そのものです」

「そ、そうなんだ」

「はい。というわけで、お客様にぴったりの本をご紹介します。こちらにいらしてください」

「ちょっと、君……」

戸惑う彼の腕を引っ張るようにして連れていったのは、写真集の棚の前だ。

迷わず二冊を引き抜いて、表紙を掲げるようにして長身の彼に見せた。

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