愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
『土本さんって……お人好しなんだね』
『えっ?』
席に戻るとグラスを片手に持っている紘人がにこやかに告げてきた。目が笑っていないとでもいうのか、先ほどまでとは違いどこか冷たい感じがする。
『実際に裏切られたら、そんな簡単に前向きには考えられないよ?』
それは私の思い違いではなかったのだと、彼から続けられた内容で確信する。たしかに綺麗事かもしれない。とはいえ――。
『そう、かもしれません。でも前を向くのにも、恨み辛みに支配されるのにも同じだけ時間を使うなら、私は前を向いて変えられない過去を嘆くより、今や未来を大事にしていきたい。そう思います』
言い終えてから、ここはあえて自分の主張をするべきではなかったと思い直す。こんなのだから私は男性と縁がないのだ。反論せず、素直に肯定だけで終わらせておけばいいのに。
紘人の反応をうかがっていると、彼は目を丸くしてどこか気の抜けた笑顔を向けてきた。
『そうやって過去の恋愛を乗り越えてきたんだ』
まさかそんなふうに結論づけられるとは思ってもみなかったので、すぐに反論する。
『ち、違います。うち、両親が離婚していて……その経験からです』
言い切って訂正したのはいいものの今度は自らこんな話題を振って墓穴を掘った気分になる。楽しくない身の上話を今日会ったばかりの人にしてどうするのか。
しかし口にしたからにはしょうがない。私はおずおずと説明を続ける。
『なんで? どうして?ってなかなか受け入れられませんでした。母や父、自分も責めました。でもどうにもならないんだって悟って……』
だったら前を向くしかない。なにより両親が離婚しているからって可哀相や不幸だと見られたくはなかった。
『えっ?』
席に戻るとグラスを片手に持っている紘人がにこやかに告げてきた。目が笑っていないとでもいうのか、先ほどまでとは違いどこか冷たい感じがする。
『実際に裏切られたら、そんな簡単に前向きには考えられないよ?』
それは私の思い違いではなかったのだと、彼から続けられた内容で確信する。たしかに綺麗事かもしれない。とはいえ――。
『そう、かもしれません。でも前を向くのにも、恨み辛みに支配されるのにも同じだけ時間を使うなら、私は前を向いて変えられない過去を嘆くより、今や未来を大事にしていきたい。そう思います』
言い終えてから、ここはあえて自分の主張をするべきではなかったと思い直す。こんなのだから私は男性と縁がないのだ。反論せず、素直に肯定だけで終わらせておけばいいのに。
紘人の反応をうかがっていると、彼は目を丸くしてどこか気の抜けた笑顔を向けてきた。
『そうやって過去の恋愛を乗り越えてきたんだ』
まさかそんなふうに結論づけられるとは思ってもみなかったので、すぐに反論する。
『ち、違います。うち、両親が離婚していて……その経験からです』
言い切って訂正したのはいいものの今度は自らこんな話題を振って墓穴を掘った気分になる。楽しくない身の上話を今日会ったばかりの人にしてどうするのか。
しかし口にしたからにはしょうがない。私はおずおずと説明を続ける。
『なんで? どうして?ってなかなか受け入れられませんでした。母や父、自分も責めました。でもどうにもならないんだって悟って……』
だったら前を向くしかない。なにより両親が離婚しているからって可哀相や不幸だと見られたくはなかった。