愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
※ ※ ※

「紘人はそんなひどい振られ方をしたの?」

 付き合ってしばらくした頃、彼の自宅でまったりしていたときに、思いきって気になっていた件について尋ねてみた。

「は?」

 案の定、突然の質問に紘人は理解不能という顔でこちらを見てくる。おかげで続けるかどうか悩んだが、唇を尖らせ補足する。

「初めて会ったとき言ってたでしょ? 絶対に許せない相手がいるって」

 そこまで引きずる相手ってどんな人なんだろう。私の指摘に紘人は気まずそうな顔になる。

「違う。恋愛絡みじゃない」

 きっぱりと言い切り、嘘をついている感じもしない。てっきり初めて会ったときのやりとりで『そうやって過去の恋愛を乗り切ってきたんだ』と言われたから紘人自身がそうなのかと思っていた。

「ふーん」

 そこで悩む。なら彼が抱えている思いは一体誰に対してどんなものなのか。踏み込んでいいのかわからない。

「どうした、妬いたのか?」

 あれこれ考えていると軽い口調で問いかけられ、頬がかっと熱くなる。

「気になったから聞いただけ」

 ぷいっと彼から顔を逸らした。嫉妬がまったくなかったと言ったら嘘になる。見透かされた自分が恥ずかしい。するとなだめるように背後から抱きしめられた。

「ありがとう。心配してくれたんだよな。でもこれは俺自身の問題だから」

 打って変わって真面目な声色と回された腕の力強さに、鼓動が速くなる。こんなふうにされたらこれ以上追及できない。

 小さく頷くとそっと頬に手を添えられ彼の方に向かされた。

「愛理」

 合図のように名前を呼ばれ、目を閉じると唇に温もりがある。年齢差か経験差か、どちらもあるのかもしれない。私は紘人に翻弄されてばかりだ。
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