愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
「第一駐車場はまだ空いてそうだな」

 さりげなく目的地に着いた旨を知らされ、窓の外に視線を移す。土曜日の昼前、次々と車が駐車場に入っていくが、紘人の言う通りまだ動物園に一番近い駐車場に停められそうだ。

 首を横に振って空いているスペースを探す。

 ちょうど一台分空いているところを発見し、そこに彼は駐車した。私は真紘のチャイルドシートをはずしにかかる。

「真紘、着いたよ。行こうか」

 いつもの癖で、マザーズバッグを背負ったあと真紘を抱っこしようとしたが、その前に紘人が真紘側のドアを開けて彼を抱き上げた。拍子抜けする私をよそに真紘はおとなしく紘人に抱っこされている。

「行こう、愛理」

 車から降りて、先を促す紘人に既視感を覚える。付き合っていたときも、こうしてよく出かけたな。いつも手を差し出してくれた。

 足早に彼の隣に並び、抱っこされている真紘に笑いかける。

「いいね、真紘。お父さんに抱っこしてもらえて」

「たー、あ」

 きっと真紘本人より私の方が嬉しく思っている。空を見たら快晴で、天気予報でも降水確率はゼロパーセントだった。日陰は少し肌寒いが、太陽が出てぽかぽかしている。絶好のお出かけ日和だ。

 チケット売り場に並び、入場券を購入してから園内に入る。そこで私はもらったパンフレットにざっと目を通してから紘人に声をかける。

「あ、ベビーカー借りてくるね。無料貸し出ししているみたいだから」

 紘人がなにか言う前に、私は入ってすぐの場所にあるサービスカウンターへ向かって駆けだした。貸し出し数に限りがあるみたいだが、無事に借りることができて彼の元へ戻る。
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