愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
「真紘、いつでも乗ってね。紘人も抱っこが疲れたら言って」

「ありがとう。それにしても、よくこんなサービスがあるって知っていたな」

 感心した面持ちの紘人に私は得意げに微笑んだ。

「先に調べておいたの。ずっと抱っこは大変だから、借りられなかったら持って来ようと思っていたんだけれどね。あと授乳室やおむつ替えスペースはレストランの中にあるらしいから、タイミングを見て行けたら」

 今はまだおむつもおっぱいも大丈夫だろう。パンフレットを見ながら最初の動物はなにかを確認する。

「悪かった」

 突然の紘人の謝罪に、思わず彼の顔を二度見する。

「どうしたの?」

 私の問いかけに、紘人は真紘を抱え直した。

「そこまで気が回らずに、気軽に出かけようなんて言って。愛理は真紘のことでたくさんの準備や下調べが必要なんだって気づかなかった」

「そ、それはそうだよ。言ってないんだから」

 気落ちしている紘人に急いでフォローする。彼が気に病む点はひとつもない。そもそもこれが私にとっては普通なので、今さら大きな手間でも問題でもなかった。

「それに……紘人がいなかったら私ひとりで真紘をここに連れて来ようなんて思わなかった。ありがとう。紘人が一緒で今日はすごく心強い」

 真紘に対してひとりで気負って、母親だから当然だって言い聞かせて。でも、同じように真紘を思ってくれる存在がいる。真紘にとっても私にとっても紘人がいると安心できる。

 これが家族なのかな?
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