愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
 しみじみ感じていたら、片手で真紘を抱っこしている紘人に空いているほうの手で肩を抱き寄せられる。

「今日だけじゃない。これからはずっと愛理と真紘のそばにいて守っていく」

 真面目に告げられ、同じく彼の腕の中にいる真紘と目が合う。不思議な感覚に笑みがこぼれた。

「うん。ありがとう」

 さっと彼から離れ、歩を進めだす。周りには家族連れやカップル、友人同士など様々だ。私たちも傍から見たらどこにでもいる普通の家族連れだろう。けれど私にとっては夢のような奇跡に近い現実だった。

「うー、あー、たっ!」

 真紘は抱っことベビーカーに乗るのを繰り返しながら、初めて目にする動物に興奮気味だった。意外にも真紘がとくに興味を示したのはフラミンゴだった。色がカラフルだからか、何羽もいるからか。

「真紘、フラミンゴだよ。綺麗なピンク色だね」

「あー、あ」

 ベビーカーから指差しをして目をキラキラさせる真紘に目線を合わせる。

「子ども心に目を引くのかもな」

「そうかも」

 真紘を抱っこしている紘人と我が子の様子を観察する。

 お目当てのライオンは見やすさのためか少し高い位置に檻が設置されていて、それなりに人だかりができていた。メスとオスが一頭ずつウロウロと歩き回る様子はなかなか迫力がある。

 さすがにベビーカーからは難しいと思い、紘人が抱っこして真紘を檻の方に向けていた。それでも真紘からライオンが見えているかはわからない。
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