愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
「真紘。ちょっとお茶を飲んで休憩しよう」

 やや強引に真紘をベビーカーに乗せると彼は不機嫌な表情になった。ところが持ってきていたいつも使っているストローマグを手渡すと、途端にそれを飲むのに集中しだす。やはり喉が渇いていたようだ。

「俺たちもなにか飲もうか」

 少し歩いたところにドリンクを販売しているスタンドがあり、その近くにはテーブルと椅子が置かれている休憩スペースがあるので、そこを目指す。まばらに人が座っていたが空いている席に腰を下ろした。

「愛理もアイスコーヒーでかまわないか?」

「あ、うん」

 家ではカフェインなど避けるようにしているが、外でたまにならべつにかまわないだろう。買いに行く紘人のうしろ姿を見送り、もうほぼ飲まずにストローを噛んで遊び飲みしている真紘からストローマグを取り去る。

 とくに抵抗はせず、少し疲れたのかぼうっとしている。持ってきていたフック付きのおもちゃを彼に見せてベビーカーに取りつけると、真紘はそれを目で追い手を伸ばして遊びだした。

 おそらくこれに飽きたら抱っこって言うんだろうな。

「それにしてもベビーカーを最初はいらないって思っていたけれど、ずっと抱っこするのは大変だし、荷物もあるからこうして乗ってくれると正直、楽だな」

 しみじみと呟きながらアイスコーヒーを両手に持った紘人が戻ってきた。

「でしょ?」

 微笑ながら答え、お礼を言いながら透明のカップを受け取る。ストローに口をつけると、苦みのある冷たい液体が喉を潤し、体温が少し下がった気がした。
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