愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
「……ちょっと並ばないといけなさそうだけれど、いいかな?」

「もちろん」

 ぽつりと呟くと、紘人は笑顔で返してくれた。なにかを許された気がしてホッとする。せっかく同じ建物なので、紘人が並んでいる間、真紘のおむつを私が換えてくることになった。

 すごいな。ひとりじゃないって……紘人がそばにいてくれるだけでこんなにも救われる。

 戻ってくる頃には列はだいぶ進んでいて、そう待たずに店内に案内された。窓際の桜が綺麗に見える席に通され、外を眺める。

「見て、真紘。下がピンク色だよ」

 子ども用の椅子を用意してもらった真紘を抱っこし、窓の外を見せる。

「あー! ぱっ!」

 桜なのか高い位置からの景色なのか、反応を示す真紘に笑みがこぼれた。真紘にエプロンを装着させ、持ってきていたレトルトの離乳食を皿に出して先に食べさせる。

「俺がやろうか?」

 いつもどおり自分であげようと準備をしていたら紘人から声がかかった。

「お願いしてもいい?」

 紘人にお皿を手渡す。比較的、真紘はなんでもよく食べる。最初は遠慮がちに真紘の口元にスプーンを持っていっていた紘人だが、真紘の勢いに圧されすぐにてきぱきとあげはじめた。

 真紘も私からではなくても、ためらいなく食べている。

「真紘は食べるのが大好きなんだな」

「母によると、私もそうだったみたい。似たのかな?」

 小さい頃はぷくぷくと丸かったと写真を見せてもらった。その写真は少しだけ真紘に似ていた気がする。
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