少女達の青春群像           ~舞、その愛~
 歩は空席になっている舞の席を見ながら心配していた。

 舞の結果は舞自身が夜遅くに連絡してくれて知っていた。響歌のことも、その時は既にわかっている。

 舞の隣の席は川崎だ。つい彼の方にも視線が向いてしまう。川崎は見た感じだといつも通りだった。舞の席を気にしている風にも見えない。

 それでも川崎は真摯な対応をしてくれたと思う。響歌の話を聞いた後だったので、それが余計に際立っていた。

 歩の中で川崎の評価がかなり上がっていた。

 反対に評価が下がったのは橋本だ。奈央の話を聞いた時に上がった評価も爆下がりになってしまった。

 受け取らないにしても理由くらい言えばいいのに。響ちゃんが怒るのなんて当たり前だ。

 歩は今更ながら舞の気持ちがわかってしまった。

 響ちゃんって、凄く橋本君に振りまわされているんだもの。橋本君がちょっかいを出してこなければ、こうはならなかったのに!

 さすがに自分のすぐ後ろにいるからできないが、睨みつけたい気分だ。

 そんな歩の目が、今度は黒崎の方へと向く。黒崎は真面目に授業を受けているようだ。

 実は歩の中では、ファミレスで会ってから黒崎の評価が上がっていた。教室で見る彼とは違って、なんだか『頼れるお兄さん』という感じだったのだ。舞が黒崎を押すのもわかるような気がした。

 そうはいっても、観察ばかりしている場合ではない。今度は自分の番だ。あと数時間で勝負の時を迎える。

 その時のことを考えて心臓が早く鳴りだした。逃げたくなるような気分にもなる。

 でも、逃げるわけにはいかない。

 舞も響歌も頑張ったのだ。自分だけ降りるわけにはいかない。それどころか2人のことを考えると勇気まで沸いてくる。

 2人はもしかしたら自分の為に告白につき合ってくれたのかもしれない。絶対に自分にはそんなことを言わないだろうが、なんだかそんな気がする。

 自分が逃げたら、そんな彼女達の想いが無駄になってしまう。

 よし、私も頑張ろう!
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