主役になれないお姫さま
アルコールで重くなった体をシャキッとさせるためにシャワーの温度を上げた。
はぁー…。何やってんだろ…。
失恋して飲み過ぎてワンナイトって…。
心の中で一人反省会をした。
熱めのシャワーを浴び終えてバスルームの扉を開けると、横谷さんがバスタオルと部屋着を用意してくれていた。それに着替え、タオルで長く伸ばした髪を拭いているとパンの焼ける匂いがしてきて、思い出したかのようにお腹がぐーっと鳴った。
寝室の壁のハンガーフックには昨日の結婚式で着ていたワンピースがハンガーに掛けてあり、ベッド横のサイドテーブルにはアクセサリー類が無くならないように小さなトレイにまとめられていた。
今まで付き合ってきた男の人には無かった『ちゃんとしている』ところを見つけて何となく嬉しくなった。
寝室のドアを開け、パンの香りがする方へ足を進めるとリビングダイニングがあり、2人掛けのテーブルの上には大きめのお皿にトーストとサラダ、スクランブルエッグがのっていた。
「今コーヒー淹れてるけど詩乃もコーヒーで良いかな?」
「はい、ありがとうございます。」
「砂糖とミルクは?」
「そのままで大丈夫です。」
「ここは俺しかいないから遠慮しないで。ほら、立ってないで好きな方に座って。」
「…はい。」
返事をすると手前の椅子に座った。
横谷さんは両手にコーヒーの入ったマグカップを持ってきて、それぞれのお皿の横に置く。
「さぁ、食べよう。」
「はい、ご馳走になります。」
厚めに切られたトーストはまわりがカリカリなのに中はふんわりして美味しかった。そして、バターの香るスクランブルエッグはとても優しい味がした。
誰かが作ってくれた朝食を食べるのはいつぶりだろう…。
休日のゆったりとした時間に何だかホッとして気持ちが緩んだのか涙がこみあげて瞳から溢れていた。
「…あれ。どうしたんだろ…。ごめんなさい。止まらないや…。」
昨夜初めて会った人にここまで醜態をさらしてしまうなんて…。
「俺といる時は何も気にせず、好きにすればいい。大丈夫、全て受け止めるよ。女性はそうやって美しくなるもんだ。」
横谷さんは私が泣き止むまで食事を中断し、抱きしめてくれた。
これが年上男性の抱擁力というのだろうか…。
身も心も力が抜けていくのがわかった。
大泣きしてすっかり瞼がはれ上がり、声がかすれたころ横谷さんがポツリと呟いた。
「1つ提案なんだが…。」
少し恥ずかしそうな表情を見せながら言葉を続けた。
「ほら、恋の傷は恋で癒やせって言うだろ?こんなおじさんで申し訳ないが俺とリハビリしてみないか?」
「…リハビリですか?」
「嫌かな?昨日の君は受け入れてくれたんだがけどな?」
「えっ?」
「俺は恋人以外とはSEXしないって決めてるんだ。昨夜、君に言ったら了承してくれたんだけどなぁ…。」
言い終わるとニヤリと口角が上がった。
「恋人だと思ったから丁寧に抱いたつもりなんだが…。まぁ、こんなおじさんじゃあ、若い女の子に弄ばれても仕方ないな…。」
横谷さんは少し拗ねたような子供っぽい顔をした。
「そっ、そんな、弄んでなんかいません!ただ…記憶が…なくて…。」
「弄ばれてなかったのか!そりゃよかった!真剣な付き合いができると分かったら安心して食欲が出てきた。さあ、食事の続きをしよう。」
そう言い終わると横谷さんは私のおでこにキスをした。
何となく罠にかかってしまった感が残った。
はぁー…。何やってんだろ…。
失恋して飲み過ぎてワンナイトって…。
心の中で一人反省会をした。
熱めのシャワーを浴び終えてバスルームの扉を開けると、横谷さんがバスタオルと部屋着を用意してくれていた。それに着替え、タオルで長く伸ばした髪を拭いているとパンの焼ける匂いがしてきて、思い出したかのようにお腹がぐーっと鳴った。
寝室の壁のハンガーフックには昨日の結婚式で着ていたワンピースがハンガーに掛けてあり、ベッド横のサイドテーブルにはアクセサリー類が無くならないように小さなトレイにまとめられていた。
今まで付き合ってきた男の人には無かった『ちゃんとしている』ところを見つけて何となく嬉しくなった。
寝室のドアを開け、パンの香りがする方へ足を進めるとリビングダイニングがあり、2人掛けのテーブルの上には大きめのお皿にトーストとサラダ、スクランブルエッグがのっていた。
「今コーヒー淹れてるけど詩乃もコーヒーで良いかな?」
「はい、ありがとうございます。」
「砂糖とミルクは?」
「そのままで大丈夫です。」
「ここは俺しかいないから遠慮しないで。ほら、立ってないで好きな方に座って。」
「…はい。」
返事をすると手前の椅子に座った。
横谷さんは両手にコーヒーの入ったマグカップを持ってきて、それぞれのお皿の横に置く。
「さぁ、食べよう。」
「はい、ご馳走になります。」
厚めに切られたトーストはまわりがカリカリなのに中はふんわりして美味しかった。そして、バターの香るスクランブルエッグはとても優しい味がした。
誰かが作ってくれた朝食を食べるのはいつぶりだろう…。
休日のゆったりとした時間に何だかホッとして気持ちが緩んだのか涙がこみあげて瞳から溢れていた。
「…あれ。どうしたんだろ…。ごめんなさい。止まらないや…。」
昨夜初めて会った人にここまで醜態をさらしてしまうなんて…。
「俺といる時は何も気にせず、好きにすればいい。大丈夫、全て受け止めるよ。女性はそうやって美しくなるもんだ。」
横谷さんは私が泣き止むまで食事を中断し、抱きしめてくれた。
これが年上男性の抱擁力というのだろうか…。
身も心も力が抜けていくのがわかった。
大泣きしてすっかり瞼がはれ上がり、声がかすれたころ横谷さんがポツリと呟いた。
「1つ提案なんだが…。」
少し恥ずかしそうな表情を見せながら言葉を続けた。
「ほら、恋の傷は恋で癒やせって言うだろ?こんなおじさんで申し訳ないが俺とリハビリしてみないか?」
「…リハビリですか?」
「嫌かな?昨日の君は受け入れてくれたんだがけどな?」
「えっ?」
「俺は恋人以外とはSEXしないって決めてるんだ。昨夜、君に言ったら了承してくれたんだけどなぁ…。」
言い終わるとニヤリと口角が上がった。
「恋人だと思ったから丁寧に抱いたつもりなんだが…。まぁ、こんなおじさんじゃあ、若い女の子に弄ばれても仕方ないな…。」
横谷さんは少し拗ねたような子供っぽい顔をした。
「そっ、そんな、弄んでなんかいません!ただ…記憶が…なくて…。」
「弄ばれてなかったのか!そりゃよかった!真剣な付き合いができると分かったら安心して食欲が出てきた。さあ、食事の続きをしよう。」
そう言い終わると横谷さんは私のおでこにキスをした。
何となく罠にかかってしまった感が残った。