後宮鳳凰伝 愛が行きつくその先に
「いい加減になさい。それ以上言えば、あなたでも許さないわよ」

「惢真ばかりを庇うなんて酷いですよ!」

「あらあら……まったく礼儀がなってないわね。侍女ごときが(あるじ)に逆らうなんて……あなたのしつけの仕方が悪いのではなくて、徐静妃?」

「喩良妃さま……」

大勢の侍女を引き連れながら、部屋へ入ってくる喩良妃に急いで拝礼する。

「喩良妃さま。私のしつけが至らないばかりに、ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません。よく言い聞かせておきますゆえ――」

「徐静妃?聞こえていたかしら?あなたのしつけの仕方が悪いのに、言い聞かせることなどできなくては?」

「喩良妃さま……ですが、」

「誰か、その侍女を捕らえよ」

喩良妃が命じると、侍女たちが阿蘭を捕まえる。

「放して!私は中書右丞の王溥、重臣の娘よ!」

「黙りなさい!」

抵抗し続ける阿蘭に近づいて首を掴み、恐ろしいほど目をぎらつかせながら囁く喩良妃。

「中書右丞の娘だからって何だって言うの?私は衛国公の娘よ?あなたの父親の官位とは比べ物にならないわ。あまり調子に乗らないでちょうだい」

喩良妃のあまりの剣幕にたじろぐ阿蘭。

「ああ、そういえば。あなたの父親が私の父上の傘下だということを忘れないようにね」

喩良妃は阿蘭の青ざめた表情を満足そうに見てから、美凰の方に向き直る。

「この者は私がしつけ直しておくわ」

「ですが、阿蘭は私の侍女で――」

「徐静妃、まだ己の立場が分かっていないようね?私とあなたは対等かしら?」

「………いいえ」
< 45 / 69 >

この作品をシェア

pagetop