死神キューピッド
だって、ここに虹太はいるのに。


しめった体温だって甘い香りだって、生きていた頃の虹太のまま、ここにいるのに。


「人間はさ、自分の見たいものしか見ようとしないんだって。だから柚の俺に対する強烈な思いが、俺を存在させてくれてんのかなって思う」


「つまりは妄想ってこと?」


「んー、妄想とは違うだろ。俺は、ここにいるんだから。つまりさ、お前の執念というか、俺に対する想いが尋常じゃないとしか思えない」


「今、ものすっごく自分を褒めてあげたい」


きっと、私の鼻の穴、とんでもなく膨らんでると思う。


「得意げにすんなよ。俺はけっこう複雑なんだから」


切なげに瞳を伏せる虹太の頬っぺたを両手ではさんで、その唇をふさぐ。


そっと唇を離して、虹太を見据える。


「虹太は、もう、向こうの世界に行きたい? 成仏したい?」


< 64 / 117 >

この作品をシェア

pagetop