死神キューピッド
あの日転落して亡くなったのは、首都高で起きた多重事故で彼氏を亡くして、意識不明の重体で入院していた若い女らしい。


ウソかホントか、彼氏は、彼女を守って自分の身を投げ出して死んだのだと、どこかの週刊誌が美談として大きく取り上げていた。


それなのに、目を覚ました翌日に、見知らぬ子どもを助けて落下死するなんて。


心のなかで改めて、手を合わせる。


詫びても、詫びきれない。


「おはな?」


「……ああ」


そのガキが指さしているのは、菜の花を小さな花束にあつらえたもの。  


花なんて買ったのは、はじめてだ。


亡くなった患者が落下した場所に設置されている献花台に、視線を移す。


献花台の上には亡くなった患者が好きだったという菜の花がたくさん供えられていて、さながら黄色の花畑のようになっている。


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