絶叫、そして契り/『ヒート・フルーツ』第1部終盤エピソード特別編集版❣
その3
真樹子



麻衣さん、三田村さんの顔をじっと見つめて、しばらくは黙っていた

そして頭の包帯がずれているのを右手で直しながら、ぽつりと言ったわ

「…狂犬さん、退院して学校戻るの、いつぐらいですかね?」

「そうね…、直近の情報じゃあ、来週早々には病院出られるみたいだよ」

「なら、そうなったらすぐ行ってきます」

私は、隣で座布団に胡坐をかいて座ってる麻衣さんに目を向けた

彼女の目…

なんか子供が心をときめかしてる時みたいだったわ

私達なんかはさ、単純に考えて、恐ろしいことになると背筋が寒くなる訳だけど、この人ったらどこかウキウキしてるみたい…

ふう…

やっぱりイカレてるわよね…


...



これに対して三田村さんは、タバコの煙を真上に向かってふーっと吐き出してから麻衣さんに尋ねたわ

「一人でかい?誰かを連れて行かなくていいのか…」

うん、その通りだわ!

むろん、あの赤い狂犬のところに乗り込むんなら、麻衣さん一人で行かせる訳にはいかない

場合によっては私も同行よ


...



「私が骨もらった時、狂犬さん一人でしたからね。対する私ん時は大勢で兵隊連れたんじゃスジが通らないでしょ。向こうからしたら、お前ふざけんなですよ…」

「何言ってんのよ、麻衣さん!一人でヤツのところに乗り込んだら、袋叩きで半殺しにされるわよ。この際、私も着いて行くわ。みんなも連れていきましょう!」

「ダメですよ。私はあの狂犬の骨を折った時から、どう決まりをつけるか考えているんですから。その通りにやります」

全く…‼

この人のことは良く知ってるつもりだし、周りがなに言っても無駄なのもわかってるけど…

ここは、そう簡単には引き下がれないわよ




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