モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 あきらかに警戒する声だった。ベアトリスが息をのむ。込み上げる緊張で心臓がドクドク脈を打ち始める。

 森の奥からすごい勢いでなにかが突進してきた。獣の叫び声が耳に届くのと同時に、ユリアンがすばやく構えた剣を振るい、獣を一撃で倒した。

 しかしそれが合図になったかのように森の中から次々と狼に似た獣が現れた。普通の狼と違い角があるし、かなりの大きさであることから間違いなく魔獣だ。ぱっと見ただけでも十体はいて、ベアトリスは血の気が引く思いがした。

「動けるか?」

 ユリアンは油断なく前を見すえながら、ベアトリスに問う。

(む、無理だわ)

 恐怖で体が動かない。そんな自分を心底情けなく思いながら、ぎこちなく首を横に振る。

「わかった。そこから絶対に動くな」

 ユリアンはそう言うと、目にも留まらない速さで魔獣の群れに向かっていく。

 獣たちが雄たけびをあげて、ユリアンに攻撃を始めた。

 訓練で倒した魔獣とは段違いに速い動きだが、ユリアンは怯まずに迎え撃つ。

 自分の体よりも大きな魔獣の攻撃を剣で受け止めて、打ち返す。

 一体倒した後は魔獣の攻撃がさらに激化して、驚くほどの速度での攻防になっていった。ベアトリスの動体視力ではなにが起きているか把握しきれないが、ときどき周囲が白く凍るのはユリアンの氷魔法だろう。
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